介護タクシーを始める前は、自分の車を洗うなんてことは盆と正月に1回ずつやればいいくらにしか思っていなかったのですが、車両運送法の試験勉強した際に、法令で旅客事業に使用する車両は定期的に洗車することが義務付けられているみたいなことを目にしてから、営業用の車は週に1回くらいは洗車するようにしています。
車を洗いながら思い出すのは、自分の父親がよく会社の車を洗車している姿でした。実は私の父は、私が物心ついた頃から職業運転手一筋の人生を歩んできた人で、若いころは、伊丹空港で消防自動車を運転していたらしいのだけど、トラック運送やタクシーを遍歴して、その後、大企業の役員付の運転手として雇われて、定年過ぎるまで車に乗り続けていました。
住んでいた公団住宅のわきに屋根付きの立派なガレージを借りて、仕事から帰ってくれば洗車していたもので、4階の自宅から身を乗り出すとガレージのシャッターが開いて、父が洗車し始める姿が見えたのです。けっこう口うるさくて恐い父親だったので、ガレージに入ってくるのを目にしたら、遊び散らかしてる部屋を片付けて。テレビも消して勉強しているふりをしている態勢に入ったものです。なんとなく物悲しい思い出です。
その当時は、車をそんなに頻繁に洗車する理由がわからなかったのですが(というより、そんなものだろうと深く考えもしませんでした)自分の車を持つようになってからは、職業運転手の頻繁な洗車行動をあわれなものに思ったものです。ところがこうして自分が営業車両を所有して自ら洗車するとなると、父の気持ちが何となくわかるような気がしてくるのが不思議です。「お客さんのためだから当たり前」とか割り切った気持ちではなく、なんだか不条理の義務とでも申しましょうか、「理由の如何によらずやらなくてはいけないもの」なんですよね。職業人というのはそういうものなんだろうなと父の人生に思いをはせるこの頃です。
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